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「見込みの呪縛」

  • 執筆者の写真: tetsuyashiraishi
    tetsuyashiraishi
  • 2019年1月4日
  • 読了時間: 2分

 時間は途切れずに過去から未来にかけて流れてゆくだけなのに、地球の自転や公転を用いてそれを区切ってしまおうというアイデアを思いついた人は、天才だと思います。朝日を見つめながら今日こそはと三日坊主の自分を叱咤激励し、新しい年のカレンダーの最初のページをめくるときに、誰しもが「今年こそは」と決意を新たにするのではないでしょうか。

 惰性に流される生活を送っていると、思い描いていた理想から次第に離れてゆき、だんだんとそれを受け入れてしまう自分がいやになってきます。そして、低くなった自分の理想を、あたかも最初からそれが求めるべき理想であったのだと考え直し、賢い「大人のように」振る舞ってしまいます。こんなもんだろうという「見込み」に従った行動を続けることによって、最終的にその「見込み」が達成されることを、私は「見込みの呪縛」と呼んでいます。

 実はリハビリテーションの現場で一番恐れないといけないのは、まさにそれです。障がいを抱えた患者を目の前にすると、これまでの経験から、将来の回復度合いを推量する「見込み」を持ちます。そしてその「見込み」に従ってリハビリ内容を組み立て、患者や家族にも説明します。最初は受け入れられなかった低い「見込み」も、時間がたつにつれ本人も大人の考え方、すなわち「障がい受容」をしてしまいます。そうすれば、治療者側の見込み通りの結果となり、低め安定という、そこそこの満足度を、患者や家族も感じてしまいます。

 もし最初の「見込み」が高ければ、治療者も現状打開の方法を真剣に模索するようになり、患者も意欲を持ってリハビリに取り組めるでしょう。さらに現在は、リハビリ支援ロボットが開発され、治療の引き出しが多くなっています。将来は人工知能と高速通信網を使った、遠隔リハビリなども本格的になってくるでしょう。オーソドックスな治療法をベースに、新しい技術を積極的に取り入れる意欲を持ち続けることが必要だと思います。

 毎朝、毎月、毎年、「子どものように」見込みの呪縛を解き放つ、心機一転を心がけてゆきたいと思います。

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