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「こんな夜更けにバナナかよ」

 今話題の映画を見てきました。ネタバレになりますので、詳しく書くことは出来ませんが、ボランティアの力を借りて自宅で充実した生活を送った筋ジストロフィーの方の実話です。「人は誰でも、他人に迷惑をかけながら生きている」と主人公が語る場面が印象的でした。他人に迷惑をかけてはいけないと、子どもの頃から教えられた私にとって、衝撃的な言葉でした。他人に迷惑をかけてもいい、甘えてもいい。でもそれによって他人もそこから得るものがある。ヒトは他人と関わり合いながら(別な表現で言うと、迷惑をかけながら)成長してゆく社会的動物であると再認識しました。

 さらに、劇中の障害者セミナーで参加者が「障害者が住みやすい社会を創ることは、みんなの役に立っている」と語り、具体例として駅などの公共施設のバリアフリー化やエレベータの設置などにつながり、現在はそれを高齢者や小さなお子様をお持ちの方が活用されている事を紹介されていました。

 この場面を見たときに、リハビリテーションの考え方の基礎となっている、ノーマライゼーション(normalization)という言葉を思い出しました。それは1960年代に北欧諸国から始まった社会福祉をめぐる理念の一つです。すなわち、障がい者と健常者が、お互いが特別に区別されることなく、社会生活を共にするのが正常なことであり、本来の望ましい姿であるとする考え方です。そこには、日常のノーマルなリズム、ライフサイクルに沿った成長、選択と願望をノーマルに持ち、経済的なサポートを受けながら、自宅で生活ができることなどが具体的に示されています。この理念とそれを実現しようとする先駆者の粘り強い働きによって、ユニバーサルデザインの導入やバリアフリー化が実現され、人権の保障がなされ、施設への隔離ではなく、自宅での自立生活への道が切り開かれてきました。

 しかし、主人公が生きた時代はまだ日本にノーマライゼーションの概念が根付いていない時代であり、その時に自立生活を送ろうと決意した主人公の勇気と、それを支えたのべ500人にも及ぶボランティアの献身的な行動に頭が下がる思いです。

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