たかが頭痛、されど頭痛

 

 脳神経外科を訪れる人の半数以上の方が「最近頭痛がひどいけど、ひょっとして脳になにか病気があるかもしれないと思って、ここに来ました。」と言われます。頭痛は非常にありふれた症状で、通常はほとんど体に影響がないものです。しかしなかには脳の病気が潜んでいることもあり一概に侮れません。まさに「たかが頭痛、されど頭痛」です。

 またとかく「頭が痛い」というと、学校や仕事がいやで怠けているのではないかと勘ぐられることがありますが、頭痛は気分の問題でもありません。頭痛にはちゃんとした理由があるのです。もっとも日頃の行いが悪い方は疑われても仕方ありませんが…。

 今まで生きてきて一回も頭痛を感じたことがない、という人はいないと思います。しかしよく頭痛がするので困るという、いわゆる「頭痛持ち」の人は三人に一人と言われています。これは高血圧症患者さんの六倍にもなります。

 しかし頭痛を仕方がないと諦めているためか、「頭痛持ち」のわずか一割の人しか病院で治療を受けていません。

 

脳そのものは痛みを感じません

 

 さて一口に頭痛といいますが、本当はどこが痛いのでしょうか?「それは当然脳でしょう」という答えが返ってくるかもしれませんが、それは違います。確かに脳は全身の痛みの元を感知してそれを知らせる役割を果たしています。しかし脳はたとえ手術で傷つけられても痛みは感じないのです。

 その性質を利用して、最近覚醒手術というものが行われ始めました。それは皮膚を切ったり、骨を開けたり、硬膜など痛みを感じるところまでは全身麻酔を掛けておいて、脳のできものを切り取るときに麻酔から覚まして患者さんの反応などを確認しながら、正常な部分を切除しないように手術を行います。そして骨を元に戻し、皮膚を縫合するときには再び全身麻酔をかけます。

 

痛みを感じる場所

 

 では痛みを感じる場所はどこでしょうか?それは①脳を取り巻く膜と②そこを走る血管、そして③頭蓋骨の周りの筋肉です。

 脳の病気例えばクモ膜下出血や脳腫瘍などで、脳を覆っている膜(髄膜・ずいまく)や脳をつないでいる動脈・静脈・神経などが引っ張られて頭痛が起きたり、細菌が感染して髄膜が敏感になったりすることで頭痛をきたします。

 血管が拡張して、血管の周りの神経が刺激されてズキズキと拍動性の痛みを感じるのが片頭痛と群発頭痛です。風邪や、二日酔いのときの頭痛もこれにあたります。

 精神的なストレスや無理な姿勢から頭や首の筋肉が強く緊張すると緊張型頭痛という最もありふれた頭痛となります。

 さらに頭蓋の周辺すなわち目、耳、鼻、口の病気は、患部が痛むと共にそこに分布する神経が刺激されて、頭に痛みが放散して頭痛となります。

 頭皮の感覚を運ぶ神経に神経痛が起こると強い突発的な痛みが生じます。

 

いつもの頭痛とヤバイ頭痛

 

 頭痛は生命の危険性があるかどうかで二つに分けられます。生命の危険がないものは『いつもの頭痛』です。そのままにしておくと最悪の場合命を取られる可能性があるものを本書では『ヤバイ頭痛』と呼びます。『いつもの頭痛』は突発的に起こる『ヤバイ頭痛』とは異なって、繰り返し起こるために、慣れっこになってしまいます。これはもともと頭痛を感じやすい体質の方が、よくない生活習慣を続けた場合におきます。

 しかしこの頭痛は適当にやり過ごすことができずに、勉強・仕事・家事に支障をきたすだけでなく、ひどい場合には寝込んでしまいます。『いつもの頭痛』の経済効果はマイナス数千億円にもなるとの試算もあります。『いつもの頭痛』の代表は片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛です。またいろんな状況で特別な頭痛が起きることがあります。

 

ヤバイ頭痛の特徴

 

 クモ膜下出血のときの頭痛のように、放置しておくと命に及ぶ可能性がある頭痛のことを『ヤバイ頭痛』と言います。これは頭の中に大事件が起きたことを知らせる重要なものです。

 ヤバイ頭痛は今までに経験したことがないような異質なものですから、比較的わかりやすいです。ヤバイ頭痛の中で手術が必要なものはクモ膜下出血、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫などがあります。また手術は必要ありませんが、厳重な治療が必要なものに髄膜炎があります。

 これらの頭痛を知っておくことは自分の命を守るために非常に大切なものですので、ここでヤバイ頭痛の特徴をまとめておきます。また簡単に病気別の頭痛の特徴を書いておきますので、心当たりがある方は病院を受診してください。

 『ヤバイ頭痛』の特徴は次の三つです。

①今までに経験したことがない頭痛

 これの代表的な病気はクモ膜下出血です。後頭部をカナヅチで殴られたように突然に激烈な頭痛を感じます。頭痛には慣れっこになっている人でも「何か変だ!」と思うような異質なものです。

②頭痛以外に症状がある頭痛

 脳に病気が起きた場合、脳の圧力が高くなり、それを覆っている膜が痛みを感じます。病気の場所によって下記のように違った症状がでてきます。このような症状があれば、即病院に行ってください。

・手足が動きにくくなったり、しびれを伴ったりする頭痛。

・意識が悪くなったり、訳の分からないことを言ったりする頭痛。

・言葉がしゃべりにくい、ろれつが回らない頭痛。

・ぼけを伴う頭痛。

・視力が弱くなったり、ものが二重に見えたりする頭痛。

・めまいやおう吐を伴う頭痛。

・などが起きてきます。とにかくすぐに病院に行ってください。

③長引く頭痛

 普通の頭痛であれば、一日でよくなります。長くても数日といったところでしょうか。しかし『ヤバイ頭痛』は脳の病気という原因が取り除かれませんので、いつまでもよくなりません。特に下記のような頭痛は要注意です。

・頭痛で目が覚めたり、起きたらいつも頭痛がする。

・頭痛がよくなるどころか、だんだんひどくなる。

 

五つの頭痛パターン

 

 頭痛の感じ方でどのタイプの頭痛かをある程度推測できます

 ある日突然「がーん」ときた場合は、あの恐ろしい『クモ膜下出血』の可能性があります。

 月に数回「ずきずき」する強い頭痛が起こって吐き気を伴った場合はほとんど『片頭痛』です。

 毎日のように頭が締め付けられるように「ずーん」と痛い場合は、肩や首の筋肉が凝って痛む『緊張型頭痛』が考えられます。

 ある時期に、夜明けになると目の奥が「ぎりぎり」と痛む場合は、頭痛の王様『群発頭痛』です。

 顔や頭の皮が「ピリピリ」痛い場合は『神経痛』と思われます。

 

くも膜下出血の頭痛と嘔吐

 

 『ヤバイ頭痛』の中で一番注意してほしいのは『クモ膜下出血』による頭痛です。なぜならこれを放置しておくと大きな出血がすぐ後にやってきて、死亡する可能性があるからです。日本では年間一万五千人もの方がクモ膜下出血で命を落とされています。

 クモ膜下出血はある日突然に起きますので、頭痛が起きたときのことを訪ねると、何時何分頃、チョメチョメをしている時に頭痛を感じましたと、はっきり答えることができます。

 頭痛は「カナヅチでうしろ頭を殴られたよう」「頭の中で風船がぱちんと弾けたよう」「雷が頭に落ちたよう」などと今までに経験したことがない頭痛であることが特徴です。しかもその頭痛は最初が一番痛く、その後もあまり痛みの程度は変わりません。

 この文章を読んでいて今の自分の頭痛はこれかもしれないと思った方は、これをゆっくり読んでいないで、病院に行ってください。

 頭痛があまりにも激しくて意識を失うこともあります。また激しいおう吐が何回も続きます。あとでお話します片頭痛は吐くと頭痛が楽になりますが、クモ膜下出血は吐いても頭痛は変わりません。出血は脳の表面に広がりますが、脳そのものは傷つけませんので手足の麻痺などの症状は伴いません。

 脳は三枚の膜で保護されています。まず脳に接して軟膜があり、頭蓋骨に接して硬膜があります。その中間にクモ膜という網目状の綿菓子を押しつぶしたような膜があります。

 クモ膜下出血の原因のほとんどは脳の太い動脈の分かれ目に出来たコブ(動脈瘤)が破裂することです。破裂した動脈瘤から勢いよく血液がクモ膜と軟膜の間(くも膜下腔)に流れ込むと敏感な膜が刺激されて激しい頭痛が起こります。

 破れた穴は流れ出た血液自体が栓となって塞がれ、出血が止まります。破れた穴が大きくて血液がずっと流れ出ると、そのまま意識がなくなって突然死という状態になります。「この痛みはどうしたのだろう」と意識がある人は穴が塞がった大変にラッキーな人です。この孔が永遠に塞がってくれればいいのですが、残念ながらそうはいきません。約半数の人が二四時間以内にふたが取れて、再出血します。ですから塞がっている間に一刻も早く病院に行き、手術で動脈瘤が二度と破れないようにする必要があるのです。

 手術は動脈瘤クリッピング術と血管内手術のふたつがあります。動脈瘤クリッピング術は頭の皮膚を切り、頭蓋骨を開け(これを開頭術といいます)、脳を寄せて動脈瘤を見つけ、動脈瘤の首の部分をクリップで留めて血液が二度と流れ出さないようにします。また開頭術を行わないで、股のところを走っている動脈に針を刺して、そこからコイルという細い紐を動脈瘤の中に入れて、それを毛玉のようにして血液が入り込まないようにする血管内手術という方法があります。血管内手術のほうが体に与える負担が少ないのでこの手術を受ける人が多くなってきています。手術法は動脈瘤の場所や大きさ、患者さんの状態など多くの要因を考慮して決めないといけませんので、具体的には主治医の話をよく聞いて判断してください。

 動脈瘤が出来るのを予防する方法は残念ながらありません。しかし動脈瘤が出来やすい体質というのはあります。一等親すなわち、親や兄弟が動脈瘤を持っていれば、自分も動脈瘤を持っている確率は五人に一人と、普通の人の四倍も確率が高くなります。昔は動脈瘤があるかどうかは血管撮影という大変な検査を受けないと分かりませんでしたが、今はMRIを使って動脈を写す検査(MRA)が痛みを伴わずに簡単に受けることが出来ますので、ご不安な方は脳神経外科を受診してください。

 

脳腫瘍は朝に痛くなる

 

 頭蓋骨に囲まれた狭い空間にできもの(腫瘍)が新たにできるわけですから、脳の圧力(脳圧)が高くなってしまいます。脳圧が高くなると脳を覆っている髄膜が引き伸ばされ、頭痛を感じます。

 脳は起きている状態では心臓より高い位置にありますが、横になると心臓と同じ位置になります。したがって脳圧は重力の関係で横になっているときのほうが高くなります。また呼吸回数が少なくなると血液の中に二酸化炭素がたまって脳の血管がふくれます。その結果血液が脳の中にたくさん入ってきて、脳圧が高くなります。このようなふたつの条件が重なっている時刻はぐっすり寝ているとき、すなわち早朝です。健康な人でも早朝は脳圧が高くなっていますが、車のハンドルの『遊び』のように余裕がありますので、頭が痛くなりません。しかし脳腫瘍の患者さんはもともと腫瘍によって脳圧が高くなっていますので、朝方頭が痛くなり、目が覚めます。

 脳圧が上がる行為は睡眠以外もあります。例えば咳をしたり便秘でトイレで力んだりすると、おなかや胸の圧力が高くなり、それが脳圧を高めます。いつもは痛くないのに、最近トイレで頑張ると頭が痛くなってきたというのは要注意です。

 頭痛の原因となっている腫瘍は徐々に大きくなってゆきますので、頭痛もだんだんひどくなってきます。

 脳腫瘍は脳自体に発生した腫瘍だけでなく、脳を覆っている膜や頭蓋骨など周辺組織から発生した腫瘍も含んだ名前になっています。しかしいずれにしても腫瘍は脳を圧迫しますので、頭痛以外に、影響を受ける脳の場所により手足がしびれる、視野が狭くなる、言葉がおかしくなるなどの頭痛以外の症状も出てきます。

 何事も早期発見、早期治療が大切です。毎朝の頭痛が一、二ヶ月も続き、それがだんだんひどくなるときには是非脳神経外科を受診してください。

 

頭を打ったら一日ご用心

 

 頭を強く打つと「脳の中に出血がおきていないか心配」になり、病院を受診していただけます。医学的には本当に脳の中に出血している場合を脳内出血、脳を覆っている硬膜と脳の間に出血すると急性硬膜下出血、出血が硬膜と頭蓋骨の間だと急性硬膜外出血と呼んでいます。脳内出血や急性硬膜下出血では頭を打ってからすぐに意識が悪くなったり、手足が動かないなどの症状が出たりして、かなりの重症ですから、必ず病院で治療を受けてくれます。

 しかし問題は急性硬膜外血腫です。これの怖いところは頭を打った後しばらくは意識がしっかりしていて、特に変わったことがないように見えることです。これは硬膜の上を走っている血管が、その上を覆っている頭蓋骨の骨折などで傷つき、出血することで病気になります。頭蓋骨は固いので骨折をすることはあまりないように思えますが、耳の上やこめかみの骨は厚さが数ミリしかありません。特にそこに太い血管が走っていますので、頭の横を打ったときには特に注意をしてください。

 最初は出血の量が少ないうえに、脳に傷つくことがほとんどないので、症状が出ないのです。そのまま放置していると出血が増えてきますので、頭痛と吐き気が出てきます。この段階で絶対に病院に行ってください。そうすれば間に合います。皆さんもご経験があると思いますが、頭が一番痛いのは頭を打ったときです。普通は時間が経つにつれて和らいでいつの間にか感じなくなります。しかし和らいだ頭痛が後でだんだんひどくなって吐き気がしてきたら、緊急で脳神経外科を受診してください。この間はたった数時間しかありません。

 

忘れた頃に災いが

 

 お年よりは足腰がしっかりしていない人が多く、ちょっとしたものにつまずいたり、机や戸など自宅の中で軽く頭を打つことが多くなります。若いときにはそれくらいはなんでもないことなのですが、お年寄りが頭を打った場合は特別に注意することがあります。それは頭を打ったことすら忘れた頃に病気になる場合があるためです。

 それは慢性硬膜下血腫といいます。頭を打ってから一~二ヵ月間かけて徐々に頭蓋骨の下の硬膜と脳との間に血液がたまってくる病気です。普通は片側だけに血液がたまってきますので、それが脳を圧迫し、反対側の手足の動きが悪くなります。あまり激しくはありませんが、頭痛が一日中続きます。脳腫瘍ではありませんが、たまっている血液の量が徐々に増えてゆきますので、頭痛も徐々に強くなってゆきます。両側に出来ると物事を考える脳である前頭葉が強く圧迫されますので、ボケてきます。「まあ年が年だから」仕方ないとあきらめていると治療の時期を失ってしまうことになります。診断はCTですぐに分かりますし、治療は頭蓋骨に十円玉くらいの穴を開け、血液を除くだけの比較的簡単な手術です。麻酔も局所麻酔(皮膚の切開するところだけを麻酔する)なのでご高齢の方でも手術が受けられます。

 慢性硬膜下血腫は“治療可能な”認知症の代表です。治療可能な認知症を見逃して回復不能な状態になってしまうことだけは避けなければいけません。

 

子どもが頭を打ったらどうする?

 

 子どもが外で遊んでいて、たんこぶを作って帰ってきました。「病院につれてゆかなくても大丈夫、これくらいのことは。」と思っても姑さんから「そんなこと言って、もし何かあったらあなた責任持てるの?」などど責められると不安になります。しかし子どもはよく頭を打ちますから、そのつど病院に連れて行ったのでは大変です。そこで絶対に病院に連れて行かなければならない状態かどうかを下記で判断してください。

病院に連れてゆく必要がある場合

・しばらく意識がなかった。

・嘔吐を繰り返す。

・だんだんぼんやりしてくる。

・けいれんが起きる。

 大人の場合は強く頭を打っても笑ってこらえている人がいますが、子どもは正直ですし、脳に強いダメージがあると必ず吐きます。そこで、頭を打っても意識がはっきりしており、一から二時間経っても吐かない場合はまず大丈夫です。

 その場合は家庭で様子を見ることになりますが、いつまで気に留めておかないといけないかといいますと、だいたい頭を打ってから二四時間は注意を向けて置いてください。その間に上記のような症状が出てくればすぐに病院に行ってください。二四時間以内に後で述べる急性硬膜外出血が起こる場合があります。

 大きなたんこぶが出来ていたり、頭の皮を切ってたくさん血が出ていたりすると、びっくり仰天して親はおろおろしてしまいます。しかし同じ強さで頭を打ったのなら、頭の傷がひどい場合のほうがよいこともあるのです。それは外傷のエネルギーが大きなたんこぶを作ったり、皮膚を切ったりすることで消費され、脳にダメージを与えるエネルギーが少なくなるからです。頭を打っているのに外見はきれいで意識がない状態が脳神経外科医としては一番恐ろしい状態です。

 

脳卒中による頭痛は予防できる

 

 脳の病気が突然起きて、症状が出ることを脳卒中といいます。その代表的なものは脳出血と脳梗塞です。脳出血は脳の血管の弱いところが破れて出血します。脳梗塞は血管の内側に血栓などが徐々に出来て脳の血管が詰ってしまうもの(脳血栓)と、心臓や首の血管にできた血栓がはがれて、突然詰ってしまうものがあります(脳塞栓)。脳出血と脳梗塞は血が出るのと血が止まるのと正反対の病態ですが、両方とも脳の血管の動脈硬化が原因です。

 頭痛という観点から見ると脳卒中の中では脳出血の方のほうが頭痛を感じやすいですが、それでも二人に一人程度です。むしろ言葉が不自由になったり、手足の動きが悪くなりますので、そちらのほうが大変です。

 脳卒中になればすぐに治療を開始しなくてはなりません。そうしなければ出血がさらに続いたり、脳がむくんで来てひどい場合は命に及ぶこともあります。現代医学は進歩したと言っても一度壊れた脳を元通りにすることは出来ません。脳卒中は予防するに限ります。特に手足の麻痺、しびれ、めまい、片方の目が見えない、ろれつが回らないなどの症状が一過性に出現した場合は、一過性脳虚血発作といわれ、本格的な脳梗塞の前触れですのですぐに病院に行ってください。

 以下は脳卒中になりやすい状態(危険因子といいます)を並べています。この逆をすれば脳卒中を防ぐことが出来ます。今からでも遅くありませんから、頑張りましょう。

 ①年齢は六十歳以上である(すみません、こればかりはやめることは出来ません。年を取ればとるほど注意をしましょうという意味にとってください)

 ②血圧が高い。

 ③糖尿病がある。(このふたつは動脈硬化を起こす元凶です)

 ④両親が脳卒中あるいは高血圧である。(高血圧の傾向はある程度受け継がれます。また家族で同じ食べ物をとっていますので、塩辛いものが同じように好きになり、知らず知らずのうちに塩分を取りすぎていることも関係しています。両親が高血圧の人はそうでない人よりももっと生活習慣病にならないように注意する必要があります)

 ⑤アルコールを飲みすぎたり、脂肪や塩分を多く取る。

 ⑥ヘビースモーカーである。(タバコは脳の殺し屋です!)

 ⑦肥満体である。(おなかでっぷりはよくありません。腹囲を男性は八十五cm、女性は九十cm以下にしましょう。腹囲はおなかの一番細いところではなく、おへそ周りで計りましょう。計るときにおなかをひっこめたりするなどくれぐれも見栄をはらないようにしましょう)

 ⑧不整脈がある。(心房細動という不整脈は心臓の中に血栓ができやすくなり、脳梗塞を引き起こします)

 ⑨運動不足である。

 ⑩ストレスがある。(女房にガミガミ言われているお父さんに同情します)

 

風邪にしてはひどい頭痛は髄膜炎

 

 風邪を引くと多少なりとも頭痛がします。しかしトイレに行こうとベッドから起き上がれないほどではありません。しかし髄膜炎になると、起き上がれないほどの激しい頭痛が後頭部から頭全体にかけておきます。頭を動かしたり、りきんだりすると頭痛が強くなります。また首が固くなって、うなずきにくくなります。

 髄膜炎とは脳を包んでいる髄膜に肺炎、副鼻腔炎、中耳炎などからウイルス、細菌、カビなどが進入して発症します。髄液は栄養豊富ですのでこれらの微生物にとって最高の発育環境です。ですから治療の開始が遅れると、あっという間に広がってしまいます。したがってこれも早く病院に行く必要があります。

 「風邪にしてはひどい頭痛」を感じたら髄膜炎の可能性がありますので、たかが風邪とバカにしないで病院に行きましょう。

 

低髄液圧症は起床後に頭痛あり

 

 脳は豆腐のように柔らかいので、頭の動きや重力で脳が動かないように脳は髄液という水に浮かんでおり、さらに神経や血管でつなぎとめられ、外側を髄膜というクッションで包まれています。髄液が何らかの原因で少なくなると、脳は髄液に浮かんでいられなくなり、脳が重力で落ち込むときに神経や血管が引っ張られ頭痛を感じます。

 一番多いのは、髄膜炎やクモ膜下出血などが疑われて腰椎穿刺検査を受けた後に起こります。腰から針を刺して、髄液をとりますが、針穴から髄液の漏れが止まらないと髄液の圧が低下して頭痛、吐き気がします。しばらく安静にして点滴をしたり、水分を多めに取ったりすることでよくなります。

 最近注目されている疾患の一つに外傷後に発生する『脳脊髄液減少症』があります。脳や脊髄は硬膜という丈夫な膜で覆われています。脊髄から出る神経はこの膜に開いた穴から出てきますが、この穴は髄液の圧が急に高まったりするときに安全弁として開き、髄液を外に逃がします。圧が下がればすぐにこの穴は塞がります。何らかの原因で塞がらなかったり、外傷などで穴が大きくなって髄液が漏れ出ると髄液が減少して、頭痛・吐き気・目のかすみ・疲労感などの症状が出てきます。横になっているときは調子がよいのに起き上がって三十分くらい経って症状が出る場合は可能性があります。

 これらの症状は頭を打った後に起こるいわゆる「むち打ち症」の症状に似ており、実際にはっきりと漏れている場所が分かる患者さんもいます。治療法としては安静・水分補給そしてブラッドパッチ法(自分の血液を糊として脊髄を覆っている硬膜の上に流して穴を塞ぐ方法)などがあります。

 

低血糖の頭痛は脳の栄養不足から

 

 「お腹が減って死にそう」なときに頭痛を感じたことはありませんか?長い間ご飯を食べないと、血液中のブドウ糖の濃度が低下し(低血糖)、頭痛がします。休日に昼まで朝寝坊をして目が覚めたときに頭が痛いのは睡眠時間が長すぎたためだけではなくて、低血糖も原因となっています。片頭痛持ちの方は低血糖が引き金となって片頭痛が起きます。吐くとさらに低血糖となり、悲惨な休日になりますので注意してください。

 低血糖で頭痛が起こるのは、脳の栄養分が足りないので貯めていたからだの脂肪を溶かして栄養にしますが、この溶け出た脂肪酸が頭痛を引き起こすからです。

 糖尿病の方はインシュリンや糖尿病の薬で低血糖になりやすくなりますので注意してください。心配な方はクッキーや角砂糖を持ち歩きましょう。

 

目の病気からの頭痛

 

 顔は頭に近いので顔の病気は頭に響いて頭痛を引き起こします。頭に一番近いのは目です。強い頭痛を伴う目の病気の代表は「緑内障」です。

 緑内障は目の内圧が高まる病気です。急性に起こると目と頭に強い痛みが起こります。また吐き気も伴います。慢性の場合は頭が重い、目がかすむ、照明の周りに虹が見えるなどの症状が出てきます。頭痛以外に目の症状があれば、眼科を受診してください。

 また脳腫瘍は脳圧が高くなるため、朝方の頭痛が特徴的であることは前に書きましたが、脳圧が高くなるともうひとつの症状も出てきます。それは視力が低下することです。脳の圧力が高いとその圧力が脳から直接出る視神経の周りにある髄液の圧力も高め、視神経が眼球に入るところが腫れてきて、徐々に視力が低下します。受験勉強で何ヶ月も頑張ったというのなら別ですが、そうでない場合は眼科で一度見てもらうことをお勧めします。

 考えてみますと、現代は目にとっては大変につらい時代です。会社で細かい数字をコンピュータの画面とにらめっこし、家に帰っても明々と蛍光灯で照らされた部屋で、明るいハイビジョン画面を深夜まで見て寝不足になる。目玉を動かすだけでなく、ピントを合わせるときにも目の筋肉が働いています。目を酷使することで筋肉が疲労し、それが頭痛として感じるようになります。またいつの間にかめがねの度数が合わなくなっていたり、乱視や遠視をそのままにして目を使っていても同じことがおきます。目や前頭部が重く感じる方は、眼科や眼鏡屋さんで検眼してもらってはいかがでしょう。

 また厳しい経済状況で仕事に根をつめないといけないとは思いますが、積極的に息抜きをしましょう。そのほうが結局は仕事がはかどります。パソコンを見ながら作業しますと、一点をじっと見つめますので瞬きの回数が減ります。そうすると目が乾いて、しょぼしょぼしたり、目が乾いた感じがしまします。これをドライアイといいます。パソコン画面を少し下にして下を見るようにする、意識して瞬きをする、目薬を差すなどして対処しましょう。意外ですが涙の量は男性より女性のほうが少ないのです。いざというときにたくさん出すためかどうかはわかりませんが、女性の方ほど気をつけてください。

 自宅でも工夫をしてください。コマーシャル制作会社に怒られそうですが、テレビが好きな方はコマーシャルのときが目を休めるときです。目を閉じて、目の周りをマッサージしましょう。

 

鼻が原因となる頭痛

 

 水泳をしていて鼻に水が入ると頭がツーンとしてとても痛く感じます。このことからも鼻に病気があれば、頭痛が起きるだろうという予測はできます。

 鼻の病気で一番強い頭痛を起こすのは、急性副鼻腔炎です。頭蓋骨は豆腐のように柔らかい脳を保護するために硬くないといけませんが、そのために重くなると今度は首に影響が出てきます。そこで頭蓋骨には副鼻腔という空洞をたくさんあけて、堅固さと軽さを両立させています。副鼻腔の中にも粘膜があり、粘液を作っていますが、それが溜まらないように鼻腔に抜ける穴(自然孔)が開いています。

 ウイルスや細菌によって口腔や気管支の粘膜の炎症が副鼻腔のそれに波及すると、急性副鼻腔炎という状態になります。副鼻腔の粘膜が腫れて、分泌物が多くなり、それが自然孔を塞ぐと副鼻腔内の圧力が高まり、強い痛みが頬や前頭部に起きます。前かがみになるとずきんずきんと更に痛みが強くなります。副鼻腔は顔の前のほうにありますが、頭頂部や側頭部などはなれたところに痛みが放散することもあります。治療は抗生物質や解熱鎮痛薬の内服などを行います。

 急性副鼻腔炎が慢性化すると、慢性副鼻腔炎となり、鼻が詰まったり、粘くて膿のような鼻汁がのどに流れます。曇りの日などには頭、頬そして目の奥が痛くなります。片頭痛の患者さんが慢性副鼻腔炎があると、片頭痛の頻度が増え、症状が強くなりますので、できるだけ直しておきましょう。一般的に片頭痛の患者さんは炎症に弱いといわれています。

 

歯ぎしりするほど頭が痛い

 

 あごのかみあわせが悪く、そのために頭痛がしたり、食事のときに顎関節が痛み、口が充分に開けられないという症状があります。またあごを動かすときにガクガクと音がします。

 二十代から三十代の女性に多く、かみ合わせが悪いことよりもストレスによって寝ているときに強く歯ぎしりをしていることが原因と言われています。

 鎮痛薬、筋弛緩薬、抗不安薬、睡眠薬などを処方します。歯ぎしりに対してはそれを防止する処置もありますので、歯科医や口腔外科を受診してください。

 

首からの頭痛は手もしびれる

 

 重い頭を載せている頚椎は過酷な労働を強いられているため、頚椎の骨は比較的早く変形して変形性頚椎症を発症します。また椎間板も変性しやすくなりますので、椎間板ヘルニアになる可能性もあります。このような頚椎の病気があると、首や肩が凝り、後頭部が痛くなってきます。これに手のしびれが重なると、頚椎の異常から来る頭痛と考えられます。整形外科あるいは脳神経外科の受診をお勧めします。

 

ジンジンする神経痛

 

 神経痛はどこの部位でも大変につらいものですが、神経が顔あるいは顔に近いところを通っているために、文字通りしかめ面になります。頭皮の感覚を担っている主な神経は前から二本(滑車上神経と眼窩上神経)と後ろから二本(大後頭神経と小後頭神経)あります。

 硬い地面でうたた寝をしていて、後ろ頭がじんじんと痛くなったご経験はないでしょうか? 特に後頭部の神経は圧迫や外傷に弱く、正座で足がしびれたときに起こるジンジン感とキリキリと刺すような痛みがします。痛む場所の髪の毛を触るとピリピリします。また後頭部の神経は頭蓋骨の深いところから出て、複雑に走る頭を支える筋肉の間を縫って皮膚に出てきますので、首の筋肉の緊張によって簡単に圧迫を受けて、神経痛になります。

 病院ではテグレトールなど特別な鎮痛薬が処方されたり、神経ブロックなどが行われます。

 

帯状疱疹は頭皮に異常あり

 

 子どものころに水痘になって高い熱が出たことを記憶している方も多いと思います。水痘はウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス)に感染して発症しますが、普通のウイルスは病気が治るときにいなくなりますが、このウイルスは感覚を伝える神経の根元(神経節)に静かに潜み、そしてその時を待ちます。その時とはストレス、寝不足、慢性的な疲れなどで体調が悪いときです。それらが引き金となってウイルスが再び神経節内で増えると、その神経が関係しているところに痛みが出現し、皮膚が赤くなって水ぶくれを作ります。これが頭皮におきると頭痛として感じられます。

 頭の皮膚が痛いときにそこを触ってみる人は多いのですが、できれば鏡に映したり、他人に見てもらって皮膚に異常がないか確認してください。赤みがあったり、水泡があれば皮膚科か内科を受診してください。特にご高齢者では病気が重くなったり、帯状疱疹が直ってからも神経痛が長く残る場合がありますので、早めに治療を受けましょう。

 

失明の危険がある頭痛

 

 耳の前からこめかみの部分を触るとドクドクと動脈が拍動しているのがわかります。この動脈(側頭動脈)が炎症を起こすと側頭動脈炎という病気になります。免疫が自分の体を攻撃する自己免疫疾患の一種と考えられています。ご高齢の女性に多い病気ですが、幸いなことに日本では稀です。しかしうっかり見逃すと失明をすることがありますので、注意が必要です。

 痛みはこめかみから始まって頭全体に及びます。食事のときにあごに痛みを感じるのが特徴です。動脈の炎症がひどくなると視力が低下し、ものが二重に見え、まぶたが垂れ下がります。最悪の場合は失明をすることがあります。体重が減少して、微熱が出て全身がだるくなったりします。

 治療は出来るだけ早く病院にいって、ステロイド剤を服用することです。

 

賢い頭痛患者学

 

【質問】病院に行けばいい薬があるんだろうなと思うのですが、医者の前に座ると緊張して自分の思っていることがいえません。どうすればいいですか?

【回答】「今日はこれを先生に聞こう」と思って診察室に入っても、高く積まれているカルテや忙しそうにしている先生を見ると、何も話せなかったということが良くあります。医者のほうも患者さんの要領を得ない話をまとめるのにエネルギーを使い、へとへとになります。そこで病院に行く前に自分の言いたいことを簡潔にまとめておきましょう。そのメモを先生に見てもらうのが一番楽で、確実です。

 医師に是非伝えて欲しいことは下記です。これを見れば、ほとんど頭痛の性質が分かります。

・いつ、何時ごろに頭痛が起こったか。

・いつもの強さか経験したことがない強さか

・痛みの性質は「がーん」「ずきずき」「ずーん」「ぎりぎり」「きりきり」のうちどれか

・頭痛が起きた時にしていたこと

・同時に起きた症状

・薬を飲んだ場合は薬の名前とその効果

 昔は医学の専門的な知識は医者しか持っていませんでしたので、一方的にありがたくお話をいただくだけでしたが、現代はインターネットでほとんどのことは調べることが出来ます。まずは自分が主治医になったつもりで、しっかりと病気のことについて勉強してください。自分は医者よりもその病気の専門家です。なぜなら今のつらい頭痛は自分しか経験していないものだからです。

 本来医者と看護師は病気という共通の敵に立ち向かう戦友のはずです。しかし自分の苦しさを分かってくれないと思い出すと、心が離れてゆき、最後には医者が敵になったりします。医者は自分を頼って一生懸命に病気と闘っている患者さんは大好きです。医療は器械ではなく人間が行っているものですから、医者を味方につけると大変に得をします。

 また薬は服用して自分の体に入ると、自分と一体になります。ですから本来は自分と同じくらい大切にしないといけません。仏壇にお供えする必要はありませんが、せめて保管場所を決めて管理しましょう。

 

病院にいつ・どこへ行くか

 

【質問】忙しくて病院に行く暇がありません。薬局で売っている痛み止めで効くので病院に行きたくはないのですが。

【回答】いつもの頭痛で市販の鎮痛薬を用法を守って飲んで楽になるのであれば、病院に行かなくても大丈夫です。しかしそれで効果がない場合は、片頭痛のように特別な薬が必要な場合か、「ヤバイ頭痛」の可能性がありますので、病院に行きましょう。

 一般的には片頭痛や緊張型頭痛は神経内科の先生のほうが詳しく、「ヤバイ頭痛」は脳神経外科の治療対象になることが多いですが、どちらにしても神経系を見てもらえるところならよいと思います。

 いきなり神経内科や脳神経外科というのが気が引ける方はかかりつけの内科の先生から紹介してもらうのが良いでしょう。子どもの場合は小児科、妊婦さんは産婦人科のかかりつけ医にご相談下さい。

 

薬との付き合い方

 

【質問】つい頭痛が起きると市販薬で済ませてしまいますが、病院でもらう薬(処方薬)との違いはありますか?

【回答】市販薬と処方薬の大きな違いは薬の含有量です。市販薬は大量に飲んでも大丈夫なように低量になっています。そういう意味では薬のききめは処方薬のほうがいいと感じられるはずです。また、市販薬はすべて痛み止めですが、処方薬は対処的な痛み止めだけでなく、同じ頭痛でも原因によって、筋肉の緊張を取る薬や片頭痛の原因となるセロトニンをブロックする薬などさまざまなタイプがあります。ストレスや不安が強い場合は頭痛でも安定剤を処方することもあります。今までしかたがないあきらめていた人も医師の診断のもとで原因に合わせて処方してもらうとずいぶん頭痛から解放されるようになります。とくに片頭痛の痛みには市販の痛み止めは効果がないのですが(混合型といって片頭痛の後に緊張性の頭痛を起こすタイプの場合は効くこともある)、処方薬ならだいぶコントロールすることができます。市販薬の飲みすぎで頭痛が起きることもあるので、月に十日以上は服用しないようにしましょう。