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こんなにある頭痛の種

 

 緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛の一般的な慢性頭痛だけではなく、私たちに病気の危険を知らせてくれるたくさんの頭痛があります。

 それ以外にも特別な病気ではなくて、私たちの行為そのものによって起こる、病気ではない頭痛があります。

 たくさんありますが、じっくり読んでいただくと、一つくらいは「あるある!」があると思います。ここが頭痛のおもしろい(?)ところです。

 

特発性穿刺様頭痛

 

 まるでアイスピックに刺されたように差し込むような痛みがこめかみ、目、後頭部の限られたところに発作的に起きます。いろんな年齢層に見られ、一ヶ月ほどで消失します。インドメタシンという鎮痛薬が効果があります。

 

良性労作性頭痛

 

 水泳やランニングなど激しい運動をした時に起こる頭痛で、運動時に分泌されるアドレナリンが原因ではないかと考えられています。また血液中の脂肪酸の増加、運動による血管拡張なども原因と考えられています。水分をしっかり補給したり、いつも痛みが起きる場合は運動前に鎮痛薬を飲むのもいいでしょう。

 

寒冷刺激によって起こる頭痛

 

 暖かい室内から急に寒い戸外に出たときや、かき氷を食べたときにキーンと突き抜けるような痛みが走りますが、これは痛みを伝える三叉神経が刺激されるためですので、心配ありません。

 

良性咳嗽性頭痛

 

咳やくしゃみ、重いものを持ったときなどに起こる頭痛です。

 

性行為に伴う頭痛

 

 性行為の最中もしくは直後に頭痛が起こる人がいます。性行為中に血圧が上がるのが原因ではないかと考えられています。行為前に鎮痛剤を飲むと予防できます。

 

痛み止めで痛くなる頭痛

 

 痛みというのは危険を伝える重要な信号ですが、それが長く続くと体力を消耗しますので、ある程度でそれを抑えようとする体の生理的な反応が起きます。しかし鎮痛薬を飲みすぎるとこの生理的な働きが狂ってしまい、逆に痛みが強くなってしまうのです。このように頭痛薬などの間違った飲み方によって起きる慢性の頭痛を慢性連日性頭痛といいます。片頭痛の治療薬であるエルゴタミンは血管収縮作用がありますが、薬の効果が切れる頃に反動で血管が拡がってしまい、また痛くなってきます。それが我慢できずに薬を飲んでしまうと悪循環に陥ってきます。

 これを直すためには、大変につらいのですが、薬をしばらく断つしかありません。一週間から二週間くらい薬をやめると徐々に頭痛から解放されます。

 セデスGは慢性連日性頭痛を引き起こしやすい薬だったのですが、腎臓障害の副作用のため二○○○年四月より製造が中止されています、古いのが家にあっても、決して飲まないで下さい。

 市販の薬の中でブロムワレリル尿酸、アリルイソプロピルアセチル尿酸など睡眠鎮痛薬が入った薬も慢性連日性頭痛を起こしやすいので注意してください。

 

中華料理店症候群

 

 食べ物が頭痛を引き起こすことは、片頭痛のところで書きましたが、グルタミン酸による頭痛も有名です。このグルタミン酸は血管を拡張する作用があります。

 中華料理はグルタミン酸を含む調味料を大量に使うことがあります。これを食べると頭痛や動悸が起きてきます。また顔が突っ張ったり肩こり、吐き気、頻脈などが起こります。食後五から三十分後に現れ、一~二時間後には軽くなります。中華料理をしっかり食べるといつも具合が悪くなる人は麺類などのスープは残しましょう。

 

血圧と頭痛

 

 高血圧の人は早朝に血圧が急上昇する場合が多く、その時に頭痛がします。一般的に上の血圧(収縮期血圧)が二二○mmHg, 下の血圧(拡張期血圧)が一二○mmHg以上になると頭痛が起きやすくなります。

 血圧を下げる薬の中には血管を拡げる作用を持っているものがあり、飲み始めたときに頭痛がする場合があります。しばらくすると慣れてきますが、ひどい場合は主治医とご相談下さい。

 低血圧の方はもともと血管が拡がりやすいために片頭痛がおきやすい状態にあります。また首の筋肉への血流が不足するので緊張型頭痛もおきやすいので、特に生活上の注意をお願いします。

 

気象と頭痛

 

 気管支喘息の人は明日の天気が予想できるといいます。それは気圧の谷が接近してきたとき、寒冷前線が通過したときなど気圧の変化が喘息発作を引き起こすからです。実は片頭痛患者さんも全く同じ条件で頭痛がしやすくなります。数時間後の雨をぴたりと言い当てる人もいるくらいです。

 

酸素と頭痛

 

 高度の高いところに行くと酸素が薄いため、脳が酸素をたくさん確保しようと脳の血管が拡張しますので、片頭痛が起きます。満員電車で長時間人ごみにもまれたり、パチンコを長時間したときなどに頭痛がするのは、この酸素不足が関係しています。

 また酸素を運搬するのは赤血球ですので、強い貧血があると頭痛が起きてきます。中年のご婦人が最近頭痛がひどくなったので検査を受けたら、子宮筋腫による貧血がみつかったということがあります。

 

透析と頭痛

 

 透析患者さんは高血圧になりやすいので、頭痛が起きやすくなります。また透析のはじめに体液のバランスが崩れ、脳に水分が移動することで頭痛が起きます。

 

甲状腺機能低下症

 

 のど仏の下にある甲状腺からは甲状腺ホルモンという体のすべての細胞の代謝に関係するホルモンを出しています。このホルモンの産生が少なくなると甲状腺機能低下症になります。体がだるい、寒さに弱い、朝が起きられない。ぼけたような行動をとるなどの症状があります。頭痛もよく見られます。

 甲状腺ホルモンは脂肪の代謝にも関係しますので、このホルモンが低下するとコレステロールの代謝が悪くなり、血清コレステロール値が高くなります。肥満でもないのに、コレステロール値だけが高い場合には疑ってください。甲状腺ホルモンを補うことで症状は軽快します。

 

一酸化炭素中毒

 

 瞬間湯沸かし器の事故で再度危険性が認識された一酸化炭素中毒ですが、この一番最初の症状は頭痛です。冬は換気が悪くなります。頭が痛くなり始めたら必ず空気の入れ替えをしましょう。

 

シックハウス症候群

 

 やっと手に入れた新築の家が病気を引き起こす。これは悲劇です。住宅の建材や接着剤などで使われているホルムアルデヒド、防カビ剤などからでる有害な化学物質により頭痛、吐き気、目がちかちかするなどの症状が出ます。特に外出先では問題ないのに、我が家に帰ると目・鼻・喉に刺激を感じるなどの症状が出る場合はシックハウス症候群の可能性があります。

 

心の病

 

 現代は変化のスピードが早くなり、先が見えにくい時代です。見えないのは時代の変化だけではなく、人の心も読めなくなって人間関係のストレスも増えてきています。そのような背景からうつ病になる人が増えてきました。

 このような心の病を持つ人のほとんどが頭痛を訴えます。頭痛のタイプは緊張型頭痛が多く、頭が重くすっきりしない状態が続きます。心の病が原因の頭痛は市販の頭痛薬やマッサージなどは効果がありません。そのため「何か重大な病気にかかっているのではないかという不安が強くなり、病院を転々とされる患者さんもいます。

 うつ病では頭痛以外に早朝に目が覚める。やる気がおきない。集中力や思考力が低下して考えがまとまらない。生きていくのが楽しくない。などの症状があります。うつ病はきちんと診断をうけて抗うつ薬を飲み、休養をとれば、必ず治る病気です。決して根性がないからだとか気力で直すぞと思わないで下さい。

 

二日酔い

 

【質問】 お酒は好きなのでよく友達と飲むのですが、一人で飲んでいると決まって翌日に二日酔いで頭痛がします。痛くならない方法はありませんか?

【回答】お酒を飲むと顔が赤くなりますが、それは顔の皮膚の毛細血管が拡張するからです。すなわちアルコールは血管を拡張させる働きがあります。したがって、血管が拡張することによって起こる片頭痛や群発頭痛はお酒を飲むとひどくなります。特に赤ワインは血管拡張作用のあるヒスタミンも含んでいるので、頭痛を誘発しやすいので片頭痛の方は控えてください。精神的緊張からくる緊張型頭痛などはアルコールによるストレス発散でかえって和らぎます。

 二日酔いの頭痛はアルコールの分解産物であるアセトアルデヒドの作用によって起こります。お酒を飲むとすぐに赤くなる人はアセトアルデヒドを代謝する能力が生まれつき弱いため、頭痛を起こしやすいと言われています。

 二日酔いの頭痛を防ぐためには簡単に言えば『急いで飲みすぎないこと』です。特に一人でのむやけ酒は普段よりも速いペースになりますので、アルコールが一気に分解されて、頭痛がしやすくなります。お酒は一人寂しく飲むものではありません。自分にあった量を、自分にあったペースで飲むということでしょう。

 二日酔いの頭痛は、市販の鎮痛薬が効果があります。また血管収縮作用のあるカフェインの入った飲み物が頭痛を鎮めてくれます。

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